数分後。
 私は、姿見の前に座らされている。


「何故?」


 すごく当たり前な質問に、仏頂面の遥香が口を開いた。

「悠真が使えなくなったから、残りの魔素を取り出してもらうわ」

 金属バットを肩に担ぎ、仁王立ちの姿勢で見下ろしてくる。
 あまりにも偉そうな態度に、つい声を荒らげた。


「なんで、私ッ!?」

「あんたが次に抵抗力が弱いからよ」


 そんで、ずっぱり即答。
 知らなかった……自分じゃ、特徴ない体質だと思ってたよ。


 というか、なんで遥香が知ってるのか。
 もちろん、教えてくれるわけないけど。


「安心なさい。魔素のほとんどは悠真を介して抽出できたわ。あんたは、ほんの少しだけ呪われちゃってくれればいいの」

「さらりと恐ろしいこと口にすなッ!!」


 他人事だと思いやがって!

 いや、実際に他人事なんだろうが。
 フォローする遥香の口調は、どこまでも軽い。
 金属バットでトントンと肩を叩きながら、適当に笑ってみせる。


「大丈夫だって。程度は桁違いに軽いし、安全面には気を遣ってあげる」

 それが、怪しいんだってば。あんたの場合。