将生には魔除けの呪(まじな)いをかけたと言っていた。
 私たちにも、相手から認識できないよう結界を張った。

 しかも、真言と祝詞で邪気祓いとなれば、極端に悠真クンだけの守りを弱くして、誘っているのだ。
 逃げ場をなくした魔素エネルギーが、わざと防御力を落とした相手に流れ込むように。


 憎々しいまでに、攻めて攻めまくる作戦だった。
 一点以外の防御力を高めて、誘き出してる。
 雛人形としては、願ってもないチャンスだろうけど。


 これじゃ、悠真クンの身体が……



「うッ……」

「悠真ッ!」


 依然として、氷点下に近い室内で半裸だけでも辛いのに。

 ぶるぶると震える肩は寒さじゃないはず。
 口元を押さえ、吐き気をこらえてるようだった。

 もはや蒼白といった顔色の悠真クンは、崩れ落ちる。


 将生が後ろから抱きかかえるものの、何の反応も示さない。


 まずい。
 思ったより、侵蝕が早い。持ってかれる!


「そこだッ! 滅せよ、妖魔折伏ッ!」


 バットを振りかぶった遥香が、いきなり床に向かって叩き下ろす。