呆れて、ものが言えない。
霊術士というのは、ちょっと昔風に言えば霊能者ってヤツだ。
非科学的とされた彼らは、すごく曖昧な存在だったけれど。
今現在では、私たちが研究して立証した霊素の理論を学び、害をなす『人ならざる者』たちを調伏させる力を持つ者をさす。
国家資格も導入され、荒稼ぎできるというイメージのつく人気職だ。
才能さえあれば、努力次第で億万長者になれる。
ちょっと危険な害虫駆除ってところか。
だから、そんなものになりたがるのは少しワイルドな環境に憧れる連中ばかりなはず。
そんなヤツらが、手を出さない代物だと?
つい後ずさって、眺めてしまう。
「本当に、呪いの人形なの? どっちも着てる衣とか、汚れてないし」
「だから、おかしいんじゃない。作られたのは戦前よ。私が買い取るまで、骨董屋の物置に眠ってたって言うし、埃でも被ってなきゃおかしいでしょうが」
それっぽくないとぼやけば、すっぱり否定される。
確かに遥香の言ってることが事実なら、このきれいさは異常だ。
なのに、隣に並ぶ親友は怪しい笑顔を浮かべる。