「拓兄も、ラクガキまでするしよー」

「悪い悪い。でも、書いたのは魔除けだから」

 落ち込む将生を慰めるようにセクター長が笑う。
 遥香も、嫌がらせのために書かせたわけじゃないだろうし。


「さっき魔素を間接的に取り出すって言ったわよね? それは、媒体である人間が必要なのよ。雛人形の呪力を受けた身体から、魔素エネルギーを搾取するってわけ」


 セクター長に書かせていたのは、おそらく身体の抵抗力を高めるような効果を持つのかな。
 ひと通りの説明を聞き終えて、弟は至極まともな疑問を抱いた。


「……それって、危険じゃね?」

「気にしなくていいわよ。魔素エネルギーを受けるのは、あんたじゃないから」

 さらりとした口調で返す遥香。
 すごいこと言ったわりに、大したことなそうに悠真クンに電極をとりつけてる。


「媒体になるのは悠真に決まってんでしょ。気付かなかった? 悠真って霊的な免疫が弱いのよ。たぶん、この中で一、二を争うくらい」


 そういえば、悠真クンの顔色がよくない。
 てっきり、不機嫌なのと半裸ってことで、表情が固くなってるんだと思い込んでた。