雛人形の起源は定かではない。
 平安時代には人形遊びとして記録が残っているし、厄落としに川に人形を流す風習もあった。

 そこから時代の流れとともに、人形を身代わりとして災厄を祓う形に変化していったのだろう。

 理論上は、女の子の厄を溜め込み続けているはず。
 それだけでも十分に始末に負えない。


「それから、悠真クンの意見。犯人が殺しそびれた七人目ってヤツ。怨恨での犯行なら、最後のひとりに執着しててもおかしくないわ……」


 と、言いかけて気付く。


「あ、すると、扉の向こうにいる女って殺しそびれた花嫁さん?」

 口にして、自分で怖くなった。

 人形か犯人かは、わからない。
 もし、殺しそびれた七人目に執着しているとしたら。


 ドアの向こう側にいる全身ずぶ濡れの女。

 彼女が、すでに人形の呪力に囚われているとしたら、打つ手はない。


 目の前にある怨念は、とっくの昔に祟りへと変わってる。
 触れた者全て、無差別に襲いかかってくるに違いない。



 さらなる窮地に立たされたことを知り、血の気が引いていく。