文明には暦がある。占術も数学と無関係じゃない。
現代人は特に。株式市場にスマートフォンのセキュリティー、パソコンのプログラム……数字を使わずにはいられない。
「だから、それが何だっていうんだ」
今度は悠真クンが苛立たしげに訊ねてくる。
話の論点が見えなかったのだろう。
その後は、専門家である玲奈が説明してくれた。
「日本各地の民話にも七人御先という伝説があります。特に海難事故で亡くなられた死霊をさす言葉ですけれど、とても強く七という数に縛られた存在だと思います」
「すでに肉体のない死霊が存在するとはな」
あからさまに玲奈の説明を皮肉ったが、彼女は気にしなかった。
諸説はいろいろありますが、と前置きして淡々と続ける。
「彼らは誰かを殺さないかぎり成仏できません。遭遇した者は、高熱を出して死亡します。そして、七人御先の誰かが成仏し、亡くなった人が新たな七人御先となります。
今、この研究室には七人います。全員、成仏できる数です」
無限に続くループのような呪縛。
強い念が死者の魂を縛り、生きている人間を呼び続ける。