「・・・澄子をよろしくね、猛君」

そう言って将君とお姉ちゃんは手を繋いで店を出て行った。

「猛・・・」

「フッ、俺らしくないくらい熱くなったかも」


冷めてしまったコーヒーをぐいっと飲み干す猛。


「まだまだガキだな、俺」


「・・・そんな事ない。私、また猛に一歩先越された感じ」

「?」

一緒に歩いて生きたいのに、猛はどんどん大人になっちゃう。

「あんな風に2人の前で言うなんて、昔の猛からは想像つかないよ」


「信じあいたいってやつ?」

コクンと頷くと、猛が私の左手の指輪に触れた。


「お前の姉ちゃん達に、こいつなら大丈夫だって・・・そう思って欲しかったから」


ボソっと呟いた猛。


・・・こいつなら大丈夫?


それって、それって・・・“猛なら私の事を任せても大丈夫”そう言うこと?


「おい。店で泣くな。俺が泣かせてると思われる」


だって、だって・・・。そんな事を好きな人に言われて、泣かない女の子なんているの?


“理由も無く泣きたい時”


それは悲しいときでも、苦しいときでもない。


猛の事を愛しいと思った時。


なんでもない日常の中で、急に愛しいと感じた時。


そうやって、猛が微笑んでくれたときなんだね。