「澄子も、猛君に自分の気持ちを分って欲しくて理由も無く泣いちゃう時あるでしょ?」
・・・理由も無く泣いちゃう時。
「泣いて、沢山泣いてスッキリする事って無い?」
「ある、かも」
ただ、小さい子供みたいに泣きたい時ってあるかもしれない。
そんな時猛は何も言わずに抱きしめてくれる。
適切な言葉なんかよりも、ただ抱きしめてくれる。
「相手のことを想って、考えすぎてパンクしちゃんだよね」
コクコクと思いっきり首をたてに振る。
「でも、そんな相手がいるって幸せだよね?」
そう言って一瞬将君と微笑みあう。
「猛君も、心配かけてごめんなさい」
ペコっと頭を下げると猛はフっと一瞬笑った。
「やっぱりお姉さんと澄子は似てますね」
「・・・え?」
私とお姉ちゃんが似ているなんてあんまり言われない。
お姉ちゃんは頭が良くておっとりしていて、
うるさくてオバカな私とは正反対だもん。
「なんて言うか。温かい考え方とかが」
テーブルの下で、こっそり繋いでた手にギュっと力がこもる。
「俺はまだガキだから、仕方が無い状況とか・・・そんなのまだ良くわかんないけど。でも・・・俺たちもどんな時でも・・・」
猛?
「信じあっていたいなと想います」
「猛・・・」
将君を前に少し幼く見えた猛が、やっぱりすごく大きく見えた。
出会った頃の無愛想な猛は、いつのまにか私の一歩前を歩く大きな猛になっていた。
この人と一緒に歩いていける。
一緒に成長していける。