「なぜ、そこまでして生きるの?」


誰もが思う平凡な質問を愛恵はした。


康介も 優の考えていることすべてなど わからない。


「わからない。1つ確実なのは、アタシは金に支配されて、真実が見えなくなってしまってる人間にはなりたくない」


恐らく 優は 優の実家を言っている…。


普通にここに居れば 金にも地位も 名誉も 不自由なことなど 一切ない 呑気な女医を出来ただろうに。


何を 真っ黒になり、わざわざ危険な場所で 自分も 死と直面しながら 生きているのか。


男ならともかく…女だ。

「もし…」

愛恵は 少し 迷ったが…
「もし…好きな人が行かないでと言ったら、どうする?」


かつて それで 自分は最愛の人を失った…


「人生にもし…なんてないわ」

優は言い切る。

もともと 弱い気質のタイプではない…。


「…でも、今は考えてしまうかもしれない…」


康介は、優の意外過ぎる 最後の一言に驚いて むせた…


「20代とはもう違うから」
優は笑って答えた。


「愛恵さんは?」

優はジョーを見て
「付き合ってるんでしょ?」


またまた 康介なら絶対に聞かないようなことを言う。


女って… すごい…

康介は、タバコに火をつけた。

ジョーは この空気を読めないだろうし 読む気もないだろうし、

順調に 肉を焼いている。

「バーベキューみたいだねー焼肉はぁ~」


康介は、自分一人 妙に 緊張して 浮いている感じがした…
「うん。彼私の所にいるわ」
愛恵の一言は 『付き合っている』より さらに 解りやすい回答だった。「彼が仕事辞めてといったら?」
優も同じ質問をした。 「辞める」
康介は これにもまた 驚いた…
今日は オレは最悪の日だ…
ビールも肉も、 どこに入っているのか…
「言い切る?」
更に優は突っ込む。
「お前仕事変えたら?」康介は 芸能レポーターになれよと言った。
優は 邪魔するなと、康介の脇腹を殴る。
彼は更に 食事どころではなく。
ジョーだけが かわらないテンションで 焼肉を楽しんでいる…。