「そ、そう…どこも同じね…」

自分のとこもそうだけど、マイペースな若い社員にはまいる。
ため息をついた金井ちゃんは、私のフロアにいる問題児のことを聞いてきた。

「結衣のとこのサブの子、なんてったっけ?大森…いや、小森…?」
「うん…小森紗世ちゃんっていうの…」

私服に手を伸ばしてブラウスをかける。
着替えた金井ちゃんはメイクを直し、私の側にやって来た。

「…その子さ、ちょっと気をつけた方がいいよ」
「何を…?」
「ワルい噂聞いたことない?結婚してるのに、いろんな男と呑み歩いてるって…」
「…うそっ!」

娘さんだっているし、ご主人ともあんなに仲良くしてるのに…⁉︎

「見かけによらないって話よ。あんたんとこの統括マネージャーだって、彼女の相手したことあるって噂よ?」
「…山崎マネージャーが…?」

ついさっきまで一緒にいた人。あの人が紗世ちゃんの相手を…?

「部下を呼び捨てにしてるの、あの子だけじゃん!…ヘンでしょ⁉︎ 」
「えっ…だってそれは……」

結婚して苗字が変わったことをマネージャーに揶揄われて、怒った紗世ちゃんが「苗字で呼ばないで下さい!」と言ったから……。


(……でも、待って。 本当にそれだけが理由?)


苗字を揶揄われたくらいで名前を呼ばせる?
本当はもっと別の意味があって、金井ちゃんの言うように私の知らない所で二人はこっそり会ってて、それで……