「し…失礼します…!」

逃げ出そう。
とにかく今は逃げないと…!


バタバタと走り出す。
勢いよく階段を駆け下りて、更衣室に急ぐ。
他のフロアには明かりもついてない。
オフィスに残ってるのは、私とマネージャーくらいのもの…?


ガチャッ!と勢いよく更衣室のドアを開けた。
驚くような金井ちゃんの視線とぶつかる。

「結衣…」

ブラウスを脱いでる彼女に気づいて、慌てて閉める。

「ごめん…ノックもしないで…」

フラフラしながらロッカーに近寄る。
息切れする私の顔を眺め、金井ちゃんが不思議そうに聞いてきた。

「なんかあった?…顔赤いよ?」

ビクッとして振り向く。
ロッカーの鏡に映る自分の顔。
髪が乱れて、頬が真っ赤だ…

「ご…5階から走ってきたから…」
「…5階?結衣は6階でしょ⁉︎ 」

ますます不思議がられる。
マズい。このままじゃ不自然だ…。

「う、うん。あの…ちょっと用事があったの。そしたら誰もいないのに物音がして、怖くなったから走って来ちゃった…」
「えー…何それ⁉︎…気持ち悪ぅ…」
「でしょ⁉︎ だから…」

呼吸を整えて服を脱ぎだす。
金井ちゃんは服を着替えながら、自分がしてた残業の理由を話しだした。

「こっちはね、蓮也がちょっとミスしちゃって。私…あの子の指導役だから、後始末がいろいろあって大変なのよ…」

年下のカレの名前が出てきてドキッとする。
誰にでも同じ態度を取るのにほっとけない人。
だから、モテる…。