声が出ない。
山崎マネージャーの話してる意味が分からなくて、じっ…と顔を見つめた。

「佐久田さんが好きなんだ。…部下としてじゃなく、一人の女性として…」

ドキン…!と胸を打たれる。
ここ数年、聞いたこともないセリフ。

「あ…あの…私…」

ハンパなく狼狽える。
この人は上司。
それ以上に考えた事もないのに…。

「わ、私は…バツイチですし…こ、子供もいますから…」

今更のようなセリフ。
そんな事、マネージャーはとっくに知ってる。

「で、ですから、あの…」

(恋なんてムリ…そもそも、誰かを好きなるのなんてムリ…)

「…だからって、好きになっちゃいけないとかないだろう…⁉︎」

強い言い方に戸惑う。
現実も何もかも引っくるめて言う。

「お前の実情くらい、ちゃんと分かってる。働き始めてからずっと、何年も見てきたんだから…」

愛弟子として。
部下として。
それとも…女性として……?

「どんなお前も好きだと言ったろう?…本気だとも言ったはずだけど……」
「で、でも…」

私はマネージャーのことを何も知らなくて、これまでも何も気にせずにきたのに…

(…あっ…!)

気づいた。
この間から、やたら自分のことを話すようになった。
それもさっきの告白と関係アリ…?

「俺が…自分のことを話すなんて、佐久田さんが初めてだよ…」

やっぱり…と言うか、どうしてなの…って感じ。
私はマネージャーの前で、部下以外の顔なんて見せたこともないのに…。