いろんな顔を見たくなるから。
いろんな声を聞きたくなるから。

見てるだけじゃイヤ…。
手にも触れたくなる。

マネージャーだけしか…
山崎さんだけしか…

目に入らなくなる……!

(それはダメ…。私には譲れないものがありすぎる…)


「…どうして要らないことするんですか⁉︎…私、何も頼んでないですよ…」

再就職先探して…なんてお願いしてない。
金井ちゃんが言ったことも、全部拒否したくらいだもん。

「どうして…私ばかり見るの…そんなこと…しないで下さい…!」

声が少しずつ大きくなる。
紗世ちゃん達が声を聞きつけて集まってくる。
マネージャーは私の手を引っ張って、階段を駆け上がった。

「離して…離して下さい…!」

息が上がる。
それでなくても今日は、久しぶりの出勤で体が鈍ってるのに。

握ったまま離さない。
マネージャーの手が痛い。
いつもの優しさがない。

まるで知らない人みたいだ……



バタン!!…休憩室のドア閉めた。
防音効果のあるぶ厚いドアの中で二人きり。

ハァハァ…と軽く息が切れる。
たった30段くらいの階段を駆け上がっただけなのに。

握られてた手が離される。
でも、走って逃げる気力もない。

壁にもたれた。
その前にマネージャーが立つ。
いつもとは違った、厳しそうな顔つきで…。

「…俺に見られるのは…そんなに迷惑か?」

恐い声で聞いた。