「仕方ないじゃない。今年は冷夏になるって早くから言ってたし、マネージャーにはバイヤーとしての思いがあるのよ、きっと…」

自分の気持ちとは逆のことを言った。
リーダーの私が理解を示しておかないと、部下も不安になってしまうから。

「今日で全部売り切れたら、ディスプレイも早く変えれるよ!今度は『美粧』さんトコの商品で、ミニガーデン作るって言ったでしょ⁉︎ 」

いつだって前向き。
これまでもそうして生きてきた。

「そっか…そう言えば、そうでしたね!」

単純な紗世ちゃんが思い出したように手を叩く。
言い出しっぺのくせに忘れてるんだから、やっぱりヤル気はないのかも…。

「私のいない間、フロアをお願いね。頼りにしてるわよ」

おだて半分で任せてみる。
この3日間、彼女がしっかりしてくれないと、他の者が困る。


(やっぱりマネージャーに3日ほど休む…って言った方がいいのかな…)

フロアのことお願いしてたら、きっと様子を見に回ってくれる。
言わなくてもきっと回るとは思うけど…。



「…あっ!マネージャー!」

噂もしてないのに彼が来た。
オドオドしながら振り返る。
こっちに気づいた彼が、顔色も変えずに近づいてきた。


「…真面目にやってるか?」

やっぱり今日も少し眠そう。
一昨日はそんな姿、ちっとも見せなかったのに…。

「やってますよ!ちゃんとマジメに!」

言葉の上ならウソも軽い。
そんな紗世ちゃんのことを、マネージャーはきちんと知ってた。