事情は自分で説明したい。
なんて言われるか分からないけど、人づてには聞いて欲しくない。

「じゃあ暫く内密にしとこう」

気を利かせてくれる部長にお礼を言って事務室を出た。
廊下を歩いて、マネージャー達が仕事する部屋の前に立つ。

今日はまだ、会う勇気が出ない。
一昨日の怒ってた声が耳の中で鳴り響いてて、少し怖い…。

(休暇が明けたら話そう…)

そう思って下におりた。
フロアでは同僚の社員達が、忙しそうに働いてた。


「…佐久田さんっ!」

紗世ちゃんが目ざとく見つけて走り寄ってくる。
相変わらず仕事はいい加減で、サボっていたに違いない。

「今日はごめんね。急にお休みして…」

先に謝った。
紗世ちゃんはニッコリ微笑んで、「全然平気です!」と話した。

「…でも、今日は夏物の注文が一気に入ってて大変なんです。入荷数も限られてるし、一か所にだけ多く売ることもできなくて…」

いつもより極端に少ない夏物の入荷数。
次回の入荷予定もないから、売る方としては気を使う。

大口のお客様だけに売る訳にはいかない。
小口のお客様も大事にしないと、来年の売り上げに響く。

「…マネージャーはどうしてこんなに少ない入荷数にしたんでしょう?注文多いから残念です…」

『夏は短いと判断…』
マネージャーはそう言ってた。
でも、これだけ反響があるのなら、もっと入荷しても良かったハズ…。