サボってばかりいる紗世ちゃんは、今日くらいマジメに仕事してるだろうか。
新人の子も、中堅の子も、ミスなんてしてなければいいけど…

気になりながら向かう職場。
もしも、あの人に会ったら、なんて声をかければいいだろう。
一昨日あんな別れ方をして、その後も何の連絡もしてないのに…

オフィスに入る前、少しだけ躊躇する。
いつも以上に緊張しながら入る。
1階の受付では、金井ちゃんが商談中だった。


(そう言えば、金井ちゃんとの付き合いも長いよね…)

同じ4時間パートとして勤め始めた。
金井ちゃんは私よりも5歳年上で、子供が幼稚園に入ると同時に社会に復帰した。

「私は専業主婦より働く方が好き!」

ハキハキ話す彼女を外商部の部長が気に入って、翌年から仕事を任された。
トントン拍子に出世して、今では大事な商談にも参加してる。
出来の悪い部下の指導役もさせられて困る…とグチをこぼしてても、彼女は楽しそうにこなしてた。

(仕事辞めるって言ったら、なんて言うかな…)

専業主婦よりもキャリアウーマンが好きな人だから、辞めるのは「勿体ない」と言うかもしれない。
会社で積み上げてきたキャリアなんて、私にとっては砂の城みたいなもの。
大事なことは、もっと他にある。
価値観の違う金井ちゃんとは、きっと生き方も違う…。


総務部のある最上階へ向かった。
私服でオフィス内を歩くのは入社日以来。
当然、いろんな人から話しかけられた。