『どんなお前も好きだ』……

あの人の言葉が重なる。
同じような気持ちで、エールを送ってくれたんだとしたら…

(ありがとう…やっぱりマネージャーは私に自信をくれる人です…)

忘れようとしても、きっと忘れられない。
だから、離れて風化するのを待つしかない。
いい思い出として、薄れていくのを待つだけ。
そんな事しか…今の私にはできない…。

家庭と恋を両立できる程、私は器用な人間じゃないから……




院内のリハビリをする室内では、各自に決められたメニューがあり、患者はそれぞれ、決められた目標に向かって取り組んでた。
母は作業療法士との話し合いの結果、両足の筋力低下予防と左手の機能回復の2種類のメニューをこなす事になった。


「面倒くさいねぇ…」

何度も何度も、同じ動きをさせられる。
入院中に足腰が弱って、日常生活が送れなくなる人も多いから。

「歌でも流れてればいいのに…」

根っからの歌好きの母が言うことを笑われた。

その性格が羨ましい。
私はどちらかというと父親似で、お喋りは苦手だから。

「…会社に顔出してくる。帰りにまた寄るね」

リハビリ中の母にそう言った。

「そう?…じゃあ山崎さんに宜しく伝えて!」

まるで以前からの知り合いのような言い方をする。
今日は総務課へ行って有給休暇の申請をした後、人事部長に退職時期の相談をするだけなのに。

(フロアにも寄らないといけないかな…あまり行きたくないけど…)