それも気に入らない…と、紗世ちゃんは怒ってたけど、自分が言い出した事だから仕方ない。

(そう考えると、あの人も子供みたいなトコある…)

可笑しくなって笑いが起こる。

大人みたいな顔してるからって、オトナな訳じゃない。
コドモみたいな時もあれば、れっきとした男性みたいな時もある。

(…もっと…いろんな顔、知りたかったな…)

涙が溢れそうになって、慌てて気を引きしめる。
仕事を辞めるのは、家族の為。
そう決めたのに、心が揺らぐ。
あの人に会ったら、きっと、もっと迷う。

(だからもう…会いたくないのに…)


明るいパステルカラーの花束が、落ち込んでる私を励ましてるようだった。
病室に来る度に、少しでも心が明るくなれるよう、考えられてる気がした…。

(…そんな事あるハズないのに…)

怒ったように帰って行った。
心配して来てくれたのに、また拒絶した。
だからあの時のまま、サヨナラしたかったのに……


病室内で話す母と息子の顔を見ながら、自分の背負ってる荷物の大きさを知った。
何も持ってないあの人とは、明日を描いてはいけない。
幾らいい人で、優しい人だからって、それに頼ってはならない。

私は…女である前に…

娘であり…

親だから……