「詩月さんが号泣するほどのことが事務所で……そんなに我慢してたなんて」


――ねえ、何があったの?


「わからない。何があったのか俺たちが聞きたい。詩月さんから、桃香さんに会って楽譜をもらったとだけ聞いて別れた。詩月さんは他には何も話さなかった」


――そう、今日はNフィルには行けないと思う。
っていうかヴァイオリンを弾ける状態には思えない

驚きと不安で、どう言葉を返していいかわからない。


――おばあちゃんの日記に書いてあったわ。
詩月くん、中2から高1まで鬱気味でクリニックに通ってたって


スマホ越しの小百合さんの興奮気味の声と話に、頭の中で色々な言葉が溢れ纏まらない。


――電車の中で心臓発作が起きたり、過呼吸になったりして、1人で電車やバスにも乗れなくって、お母さんが登下校も車で送迎していたらしいの