煌と雷もお袋を嫌いなわけではないけど、好いてはいない。


けど、あの二人は基本マイペースだから場の雰囲気にそれなりに合わせてくれるだろう。



ここから現地まで車で二時間半。



何もなきゃいいけど。




「出発すんぞー。忘れ物ないかー?」


「「はーい」」




車を走らせること1時間。



ミラーで後ろの座席を見ると、見事に全員爆睡だ。



朝からあんだけ騒いでたら、そりゃ寝るわ。



「翔ちゃん、コーヒー飲む?」




助手席に座る凛が、俺にコーヒーを手渡してくれる。



俺を翔ちゃんと呼ぶのは凛しかいない。

昔からその呼び方だったからか、どうも他の呼び方ができないらしい。



「サンキュ」



受け取ったコーヒーを飲むと、コーヒーならではの苦味が口に広まる。



さすがだな、凛。

俺の好みを分かってる。



好きなメーカーも、ブラックのコーヒーだということも知ってくれている。



昔から、なぜか凛が隣に居てくれるだけで、俺は安心できた。



だから、いつから好きだったとか聞かれても正直分からない。



物心着いた時から、俺は凛が好きだったんだから。