えっ…!もう?


「もう行くの?」


「ああ。ごめんな。」


待ってくれよ。
まだ帰っちゃ困る。


だって…だってさ…!
もしかしたら来るかもしれないじゃん!


「待って!あとちょっとだけ…」


俺が歩き出した兄ちゃんのスーツを掴もうとしたとき


「望…?」


柔らかい声がした。


透き通るような
優しいような…


心地良い声が。


兄ちゃんは動きを止め
ゆっくり振り返った。