かすむ目で見る。

乙女と紅は降ってくるゴーレムの拳をかわしながら、何とか私から遠ざけようとしている。

…一度は敵対した私に全幅の信頼を置いている。

ほんの数時間前まで見ず知らずだった魔女の私の為に、本当に命を懸けて囮役を引き受けてくれている。

…どこの世界にも変わった人間っているのね。

そしてそんな人間ほど、簡単に命を投げ出そうとする。

「くっ…!」

ガクガクと膝を震わせながら、私は何とか立ち上がる。

人間ばかりにカッコはつけさせない。

オイシイとこは、私が独り占めしてやるんだから。

そう思った私に。

「!」

いつの間にか近づいてきた修内太が肩を貸してくれた。

「無理すんな、ぶっ倒れるぞ。お前は貴重な戦力なんだ」

そう言って。

「!!?」

彼は自らの『矢』の魔術で左の掌を撃ち抜いた。

「魔力を帯びた血が必要なんだろ?俺の血じゃ駄目か?」

「ば…」

馬鹿、と言いかけて、私は額に手を当てて溜息をついた。

そうだった。

私の側に一番変わった人間がいたんだった。

魔女を親友だと豪語する、私の六百年の人生の中で一番の変人…。

「魔女の血に比べれば質が劣るけど…この際贅沢は言ってられないわね」

そんな憎まれ口の後。

「ありがと…恩に着るわ」

私は小さく呟いた。