「承知した」

紅が槍をビュンと振り、私に背を向ける。

「預かった十五分、命を賭してあの化け物から四門メグを護ろう」

「大袈裟よ」

私の言葉に微かに笑みを浮かべる気配を残し、彼は乙女と共にゴーレムへと突撃していった。

「キザな奴」

でも、頼りになる奴。

死ぬんじゃないわよ…!

心の中で呟いて、私は早速魔方陣の準備に取り掛かった。

私が必要とするのは、ガーラが準備したのと同じ直径十メートルほどの大魔方陣。

当然、多くの血液を必要とする。

『再生』の魔術で傷が塞がりかける度に、自ら傷口をえぐって出血を多くした。

そうして流れ出る血で、地面に魔方陣を描いていく。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

自然と呼吸が乱れてくる。

目がかすむ。

足取りがおぼつかなくなってくる。

…紅を召喚してから、本日二回目の魔方陣。

既にかなりの血を使って、私の体内には血が足りていない。

そりゃあ並みの人間よりは遥かに血液の出来るスピードは早い私だけど、この短時間でできる量はたかが知れている。

そして魔女といえど、出血多量はつらい。

「く…」

魔方陣の三分の二を描き上げたところで、私は片膝をついてしまった。

「血が…足りない…!」