だが。

如何に強いといえど、所詮はたった一人だ。

こちらには無限の軍勢が控えている。

「数で勝ればどんなに個が優れていようと!」

私は魔方陣に魔力を注ぎ込み、一度の召喚で可能な最大数のスケルトンを呼び出す。

その数、二百体。

まるで蟻の巣から這い出る軍隊蟻の如く、スケルトン達は剣と盾を構えて魔方陣から我先にとあふれ出してくる。

そろそろ屋上には足の踏み場もなくなるのではないか。

それ程の軍勢だった。

しかし。

「そこの魔女」

槍を携えたまま、うろたえる様子すら見せずに紅は私に向かって言った。

「『一騎当千』という言葉を知っているか?」

そう語った直後。

「小僧、ありったけ撃て。出し惜しみなどする場面ではないのは理解できるな?」

「うるせぇな偉そうに!」

罵り合いながらも絶妙の呼吸で。

紅の連続突きと、修内太とかいう小僧の『矢』の魔術の連射が火を噴いた!

両者の攻撃は弾幕となり、死をも恐れぬ進軍を続けるスケルトンの軍勢を次々と射抜いていく。

恐怖を知らぬ事がかえって仇となった。

防御も回避もする事なく、群れはことごとく殲滅されていく。

あれ程の数を誇っていた不死の集団は、瞬く間に一桁までに追い詰められる。

そして次の瞬間。

「        っ」

四門メグが何事か口走る。

それは乙女に対して行使した、『加速』の魔術の高速詠唱だった。