女の目つきが変わる。

「あんた…乙女はあんたの国の女王なんでしょ?それでも助けないの?」

「馬鹿を言うな。俺は、『乙女と俺を元の世界に戻せ』と言っているのだ。これはお前ら魔女同士の揉め事だろう。お前らだけで解決しろ。俺と乙女には関係ない」

「……っ!!」

その言葉に憤った女は右手の氷の刃を再び俺に突きつけようとして。

「!!」

俺は素早く槍の一撃でその氷の刃を破壊した。

「刃を突きつけるな。気分を害する」

「…それはこっちもよ」

縦長い瞳孔と金色の光を灯す瞳で、女は俺を睨む。

「乙女は…あんたならこの状況を打破できるって信じて、私に召喚を頼んだわ。私もあいつとは知り合ったばかりだけど、人間の割に心根は悪くなさそうだから…そんな奴の言う事だからと思って信じた…けどあんたは最低だわ」

あっさりと背を向ける女。

「ほぅ」

俺はニヤリと笑った。

「俺の説得は諦めるのか?」

「ええ、もう結構よ」

女の背中を、殺気によく似た不思議な気配が包んだ。

この女が魔女だというならば、それは魔力だろうか。

「そもそも人間に頼ろうとした私が馬鹿だったわ。私は人間とは相容れない魔女だもの…今までだって、これからだって、自分の前に立ちはだかる壁は自分で打ち砕いてやるわ」