「魔と人間の狭間に位置する魔性の一族の血を糧に、我、異世界への干渉を行使せん」

乙女に注文された助っ人の召喚は、流石に呪眼のヤッツケ召喚という訳にはいかない。

久し振りの正式な召喚魔法だ。

呪文を思い出しながら、私は緊張した面持ちで詠唱する。

「我、現世に求めたるは、銀髪の戦乙女に縁持つ真紅の槍兵」

乙女に事前に聞いた助っ人の特徴を詠唱の中に織り交ぜながら、デッドゲイト流の召喚魔法の術式を組み上げていく。

…私の身から放たれた魔力の粒子が、蛍の光のように魔方陣の中を飛び交い、やがては魔方陣そのものも淡く蒼い発光を始める。

干渉しているのは、乙女が元いた『彼の地』。

乙女との『縁』を触媒に、私の魔女の血を代価に、召喚の契約を結ぶ。

「古の契約に基づき、この地に来たりて我が行く手を遮る不死の軍勢を殲滅せよ」

デッドゲイトの召喚は、『何を代価に、どこから、何を縁とし、どのような目的で』を詠唱する。

ならば、これが呪文詠唱最後の一節。

「デッドゲイトの名の下に、出でよ、英雄『紅』!!」

本来ならこういう召喚には真の名を必要とするが、わからないのだから仕方がない。

最後に魔方陣に必要量の魔力を注ぎ込むと、私の足元の魔方陣が回転し始めた。

発光は更に強まり、眩いばかりの閃光と化して目が開けていられなくなる。

そして、世界を覆い尽くすほどの白い輝きと共に。