「あ…大丈夫ですか!?」朱鳥は
ハッと我に帰り、少年と真正面に
向き合った。

中性的な顔立ちの少年は朱鳥と
目を合わせようとせず、ただ唇
を噛んでいる。

「足…怪我してる。ちょっと、
見せて!!」そう言い、朱鳥が足を
触った瞬間、声が洩れた。

しかし少年はすぐに足を引き、
朱鳥にハンカチを渡した。

「普通じゃ怪我しねぇと思うよ。
そんなとこ」鼻の頭を押さえ、
少年が言った。

朱鳥が触ってみると擦り傷に
なっていて、少し血が出ていた。

少年から受け取ったハンカチ
には絆創膏が挟まっており、朱鳥
は驚いて少年を見返した。

しかし、既に少年の姿は無く、
朱鳥の荷物だけが残されていた。