彼女の左腕には無数の切り傷と
大きな火傷の痕があった。
そしてその傷痕に隠れるように
して、タトゥーが彫られていた。

「…面白いですねぇ……実に」
佐脇は笑い、彼女の襟首を掴み、
顔を殴った。

「もちろん、貴方は殺しません。
ただ…刺激を与えなくてはね」
佐脇の背後にいた男達が彼女を
掴み、再び殴った。

痛みにうめきながらも、彼女の瞳
は佐脇を捕らえたままだった。

恐怖や悲しみ……
そんなものよりも、激しい憎しみ
と殺意が芽生えていた。

「もういい!!」突然佐脇が声を
荒げ、男達にボコボコにされた
彼女を見て、冷たい目を向けた。

「これ以上やると、貴方の身体が
持ちませんね。だからあとは…
精神的に落とすのみです」佐脇
は言い、また笑っていた。

顔を上げた彼女の目をジッと、
1人の男が見つめていた。
佐脇の横に立ち、ナイフを片手に
佇むその男……

「黒崎剣護。私の部下ですよ?」
呼吸の仕方を忘れたように、彼女
は苦しそうに息をしていた。

彼女によく似た、濃紺の瞳をした
その男は左腕に×印の大きな傷
があった。

「そういえば……!
貴方の育て親でしたね」佐脇が
楽しそうに笑った。