「私。頑張ろうかな。」


何回も同じ事思って。

それでも思うたびに失敗して。

でも自分から動かなきゃ変われないって気づいた。



「これ言うの、何回目かな。」

乾ききった笑い声をもらす。


「いいんじゃない。変わろうとしてるんだから。」

迷が笑顔で返してくれる。



「……そうだね。」

まずは、小さな事から始めよう。

慣れてきたら、大それた事にも挑戦しようか。
失敗は成功のもと。

いける。


私はできる。






私は一人じゃないんだ。








【家】


帰ってきた。

今日は、ちょっと違う事をしてみよう。


私は、いつもよりもちょっと大きめの音を立ててドアを開ける。

ぎぃ


ドアを開けて中へ入っても、まだ誰も気付いてないらしい。

楽しげな声が聞こえてくる。



…今日から………私は…!


「ただいま!」






変わるんだ。





こっちへ近づく3人の足音が聞こえる。

振動で私の足先に伝わってくる。


少し膝が震えてるや。

…でも。いった。言ってやったんだ。


ガチャ

リビングのドアが開く音がして、背筋がピンとはねた。


目の前には、お母さん。お父さん。そして、光樹。

2人が私を睨みつける。


私と2人の間の異様な雰囲気を感じた光樹が不安げな顔をする。

「ただいま。」



睨みつけてくる2人に笑顔で返す。


その刹那。2人は心底驚いた顔をしたが、また怖い顔に戻った。



「黙れ。」


冷たいお父さんの一言に、私の顔は笑ったままピシャリと固まった。



背中にナイフを這わされているような感覚。

つーっと冷や汗が流れる。


「お前には、俺たちと口をきく権利がない。」


唇を強く噛み締めて、前から迫り来る刺激に必死で耐える。

「あなたは、ただ黙っていればいいのよ。出来損ない。」



違う。私は!

「出来損ないなんかじゃないし、家族なんだから話すのは普通じゃん!」


「お前っ!口答えするのか!」

「するよ!幾らでもしてやる!」


光樹…まっててね。私、頑張るからね。


大きめの足音をわざと立てて二階の自分の部屋へ行く。




今日の成果は、親に反発したこと。