【家】


「…ただいま。」


玄関でポツリと呟く。
返事が返ってこないのはいつものこと。
小さくため息をついて、ワイワイ騒がしいリビングのドアを横切る。

私は、帰ってきたよって伝える為に『ただいま』を言ったのに…
『おかえり』がないと、帰ってくるなって言われてるみたいで悲しい。


あぁ、私必要とされてないな。独りぼっちだなって実感する。

二階の自分の部屋に行くために階段の下まできて上ろうとすると…


ぎぃぃ

「っ!?」

しまった!音がなっちゃった!

それまで騒がしかった会話が止み、徐々に足音がこちら側に近づいてくるのがわかる。

こないで。こないで。近づかないで!
そう思ったときには遅かった。

ガチャ


ドアが開いて、私の大嫌いな人達が顔を見せた。その下で、またも私の大嫌いな小さな子が顔をのぞかせる。

「五月蝿いわね。クズならクズなりに迷惑かけないようにしなさいよ。」

「そうだ。家族水入らずの会話を邪魔するなんて、お前も偉くなったもんだな。」
黙れ。黙れ。

私だって家族だよ。また仲間外れなの?
知ってる?私、いつも学校で一番の成績なんだよ。
知ってる?私、迷っていう仲間ができたんだよ。
知ってる?




私、今死にたいと思うくらい悲しいよ。





ねぇ、知らないでしょう。あんたたち。
私が何を思ってるのかなんて、知ろうともしたことないでしょ。

ほんと。
産んどいて薄情だよね。
弟の光樹(こうき)は良いよね。
愛されてるね。

こんな事がしたかっただけなら私なんか産まないでよ。

責任持ってよ。新しい命を作った事に。


私ね、暴走族の姫になってたんだよ?それすら知らないでしょう?

それからね、話したい事いっぱいあるよ。あり過ぎて口から溢れてきそうなくらい。


だからね?聞いて。私の声を……。