カーテンが開いた窓から差し込む月の灯りがほんのりと私を照らす。
なんだかそれが心地よくて物思いにふけてるとカラカラとドアが開いた。
「起きたんだね…。」
現れたのは何処か安心した様な表情を浮かべる迷で。
手にはカフェオレを持っている。
それも今の季節に最適なあったかいやつ。
「迷…。」
迷は私に無言でカフェオレを渡し隣に座った。
二人の間に沈黙が訪れる。
カフェオレのプルタブを開ける音さえも響くのが怖くて二人ともずっと握りしめている。
少し体制を立て直して迷の顔を横目でチラッと盗み見る。
怒ってる…?
一時間くらいはたっただろうか。
いや、本当は10秒も無かったのかもしれない。
少しずつカタカタと震えてくる手を必死に抑え込む。
さっきのが怖かったのか。迷が怖いのかはわからない。
「wingさ…。」
いきなり沈黙を切った迷の声にビクッと反応して返す。
「…wing。こっち向いて。」
強制するような鋭い声が降ってくる。
向けない、迷の方なんて。
「wing。」
いやだ、やだごめんなさい。
私のせいでごめんなさい。怒らせちゃってごめんなさい。迷惑かけてごめんなさい。
嫌わないでください。こんな私を。
側にいる資格なんてないけど側にいさせてください。
いいこなんかじゃない私の、側にいて。
嫌わないで。嫌わないで。嫌わないで。嫌わないで。嫌わないで。
「こ、wing!」
迷にぐいっと両肩を掴まれてそっちを向かされる。
視界がぼやぼやぼやけて。
汗のせいなのか涙かはわからないけどベタベタで。
「なんで、もっと周りに注意しなかったの。死ぬかもしれなかったんだよ。」
いつも通り優しい言葉を選んでくれるけど、その言葉には怒りがこもっている。
だって、だってさ。
「いつも、隣に誰かいたんだもん。
いつでも私を守っていてくれて隣にいてくれた。
まだ淳也たちが側にいるって勘違いでもしてたのかも。馬鹿だ。
もう、側で守ってくれる人なんていないのに…。」
何でもっと早く気づかなかったんだろう。1人だって事に。
あの思い出の様な日が、ほんとは夢だったんじゃないかと思った。
皆んなで笑って、笑って、、笑って、、、。