切った後しまったと思った。
こいつらは、青星を狙っている。
私が青星と知り合いだとバレると今ただでさえゴタゴタしてるのに面倒な事になるとおもった。
放心していた男が、濡れた犬の様にぶるぶると首を振り体制を整える。
そして私を睨みつける。
『蛇に睨まれた蛙』とうまいこと纏めたいが向こうは蛇でもこちらは蛙ではない。
兎とでもいって欲しいものだ。
ってそんな事はどうでもいい!
ほんとに、これは笑って済まされる話ではない。
「勝手に電話切ってんじゃねぇよ!!!」
男にいっぱつ蹴られる。
淳也ほどには至らないがやはり痛い。
後ろの壁に思い切り背中を叩きつけられた。
今私がいる場所を見渡すと、いかにも悪い暴走族の倉庫ですとでも言うような旗のマークが壁に刻んである。
私が怯んだのを見て男たちが一斉に殴りかかってくる。
痛い。痛い、痛い。
骨がズキズキする。折れてはないと思うけど。
私が裏切り者となった後、暴力は結構受けた。
クラスの人らからも、青星からも。
なれたっちゃ慣れたかな。骨は強くなった気がする。ただアザが絶えないけど。
ジンジンと身体中が疼く。
少しずつフワフワしてくる意識に、気を失うってこういう事なんだ。と変に納得する。
顔はあまり蹴られてない。
ここから出るとき、離れた場所で見つかってもらうには自分で歩いていくしか方法がなく、視力聴力を奪うとこの倉庫の近くで誰かに発見される可能性が高くなるからなのかな。
クスリやってる癖に意外と考えてるんだな。
徐々に遠のいていく意識に、うっすらあの人の影が映る。
いつか、またあの日みたいに________
…………ここ……どこ…?
「っ痛!!!」
確認しようとして辺りを見回したいが激しい痛みが全身を襲う。
その時、開けてきた視界から美術準備室だと理解した。
ここは多分、本棚の裏。
初めて迷と会った時、迷が現れた場所。