「じゃあね」
「うん、気をつけてね」
家の前から去っていく迷の背中を見て思った。
(迷は…どこへ帰るのだろう)
帰る場所は、あるのだろうか。
私みたいじゃなく、ただいまの後におかえりが返ってくるのだろうか。
そうだといいな、そうじゃないなら私が言ってあげたい。
おかえりって……。
そんな事を考えながら自宅のドアを開け…
なんで、こんなとこにいるの?
はやく、見えないとこいってよ。
お父さん…
玄関の壁に背中を預け此方を睨んでいるお父さんが目に入る。
「いつまで帰ってこないつもりだったんだ。
お前が帰ってくるまで鍵を閉められないんだからそれぐらい考えろ。迷惑だ。」
だったらさ、鍵しめときゃいいじゃん。
そしたら私その辺でのたれじぬの待ってるからさ、後で思う存分後悔してよ。
娘殺したって、人殺しだって。
なんで、自分からどん底に入ってくれないかな、お父さんも、お母さんも、青星も。
自分の失敗で後悔してくれたらいいのにな。
私が手を出さずに済むならそれがいい。
溜息をつくようにお父さんを睨みながら階段をあがっていく。
その場の空気が冷めたのを確認して部屋に入ってベッドの上に体育座りでふさぎ込む。
(だめだ、だめだ、だめだ!)
自分がどんどん嫌な奴になっていく、
自分からどん底にって私の方こそ自分で自分の首を絞めてるじゃん。
口には出さなくてもあんな事を頭で考える自分が怖い。
怖い怖い怖い。
自分がどんどん自分じゃなくなる。
数日後______
来た、画鋲。
まだやるのか。
今度は量増やしてきやがったし。
自分の靴箱から金色の針がザラザラと流れ落ちてくる。
こういう時はこの学校の蓋つきの古臭い靴箱が嫌になる。
さっさとリフォーム的なのしてよね!もう嫌だわ、上まで持ってける量じゃないし下に落としとこう。
そして私は靴箱に入っていたそれをこれまたザラザラと落とす。
地味に足に刺さるんだよね。落とす時。
きっと家に帰って靴下を脱いだ時赤い点々が付いてるだろうがそんな事は気にしない。
だってそれ以上に蹴られた傷とかあるし。
そんな事を考えながら教室のドアを開ける。
前参観の時にあんな事を言われてしまったから悪口は大分慣れてきたと思う。
ドアを開けたその刹那、目の前に飛び込んできた光景に目を瞑りたくなる。
淳也が今世紀最大の失敗をしたような顔をして泣いている叶㮈の頭を優しく、しかし怒りのこもった手で撫でていて、
恐らくその怒りは私に向かうものだろうと思う。
その周りには、彩斗、茜、翔太が悔しそうな顔をして立っていて、私に気づいた汎がこっちを凄い形相で睨んできた。
「湖鳥羽ちゃんさぁ…、ほんっと最低だよね。嫌いだよ、あんたなんか。消えればいいのにさ。」
深く、そして冷たい瞳が私を捕らえる。
叶㮈が何故泣いているのかはわからない、いや分かるかな。
多分私が叶㮈に何かやったとか言ったんだろうな。
驚くほど冷静を保っている心とは裏腹に体はわからないくらい小刻みに震えている。
あぁ、なんだ。
そっか、そっかまだ続けるんだね。裏切り者ごっこ。
「消えないよ。」
ねぇ、馬鹿なの?消える訳ないじゃん。
「はぁ!?」
「何で消えなきゃいけないの?」
せっかく、居場所が見つかったんだよ?
帰る場所が見つかったんだよ?
生きててもいいって思えたんだよ?
ねぇ、何でそんなに否定するの?
叶㮈が来る前はみんなでもっと笑ってたじゃん。
みんな仲間だってさ。
汎がグダグダ文句を言っているのを聞きながら横を通り過ぎる。
「っおい!無視すん…「ねぇ叶㮈。」
「…なっなに!?酷いよ!こんな事して!」
「こんな事って何?死にたいと思う程のもの?貴女の中の私がした事はそんなに苦しい事だったの?」
ねぇ叶㮈、ねぇ叶㮈、ねぇ叶㮈。
ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈ねぇ叶㮈。