「黒崎さん、朝貴には双子の妹がいます。

彼女を朝貴の身代わりとして『ラグタイム』で働かせましょう」

そう言った俺に、
「み、身代わりって…そんな、ムチャクチャにも程がありますよ！」

黒崎さんが声を荒げて反論した。

ムチャクチャ？

店の評判が落ちるくらいなら、ムチャクチャなことをした方がずっとマシだ。

「武人や翼には双子の弟が代わりに働くことになったと言えばいいことです。

それよりも、今はこの状況を何とかすることがずっと先です。

朝貴が駆け落ちをしたと言うことは誰にも言わないでください。

武人にも、翼にも」

「わかりました…」

黒崎さんは呟くように返事をした。

彼には悪いけど、朝貴が見つかるまでのこの状況を何とかしないといけない。

店の評判が落ちてしまったら、元も子もない。