「神楽君、これ忘れてた……よっ」



イチャイチャする、あたし達の後ろからかけられた声に顔を向けると、そこにはあの女の子が居て。



慌てて走って来たのか、
綺麗な髪が少し乱れていた。



「あー、ありがとう。後藤さん」



初めて名前を知った女の子は後藤さんって言うらしく。


璃久が滅多に見せない笑顔を向けているのに、後藤さんの視線はあたしが無理矢理絡めた腕だった。



後藤さん。

やっぱり璃久が好きなんだ。



小さな不安が過ぎる中、


彼女だもん! 


そんな風に言い聞かせて、あたしは絡めた腕に力を入れた。



「え、あ、うん」



咄嗟に作った笑顔を璃久に向けながらも、後藤さんはあたしをチラチラ見て。



あ、あたし……彼女だもん。



少し気弱になったあたしも後藤さんを見つめた。