グランドを出ると、いつもの出迎えだ。

「あっ、横山くん!
お疲れさま!これ、タオル」

「横山くん、ポカリもあるよ!」

「これ、ハチミツレモン!」

女子が群がるから、僕は部活が終わっても30分は着替えに行くことができない。

というか、これが男子に嫌われる理由にも繋がっているのだが。

「…すみません。僕、今日は急いでるんで。
あ、良かったら野球部の方たちに持ってってあげて下さい。たぶん僕より疲れてると思うんで」

「えー!」

「横山くんのために作って来たのに!」

このキンキン声が一番頭にくる。

ホンット、うるさい。

僕が頼んで持ってこさせた訳でもないのに、なんで断ったら文句を言われにゃならんのだ。

「まぁまぁ、ここは気を使ってあげようよ」


女子の群れを押し退けて入ってきたのは、見覚えがありすぎる顔だった。


「さ、税所さん!」

「何よ、私達が横山くんに差し入れあげてるんだから邪魔しないでよ!」

「だってさぁ、横山くん、明らかに迷惑そうな顔してるよ?」

「へ?」

思わず、間抜けな声を出してしまった。


「よ、横山くん。本当なの?私達、迷惑?」

「いや、迷惑というか、その、……」

「もう今日はひとまず帰んな。
つーか、それ野球部に持ってってあげれば?
あんたたちが大好きな横山くんがそう言ってるんだから」

「う…横山くんが言うなら…」


嫌そうな(めちゃくちゃ)顔で野球部のグランドに、女子達は入って行った。