「で、誰なんだ」

休み時間、洋右は僕の机にどかっと座って、取り調べでもする警察官のような顔をして訊いてきた。

「っとに、お前に彼女ができるなんて、どんだけ可愛いんだろうかね、お相手さんは



付き合ってる、か。

付き合ってるふりだけど、その秘密を言ったら僕の寿命は30年くらい税所に縮められてしまうから言えないけど。


「お前が絶対可愛いって思う子」

「…え、西原カナ?」

「ちげーよ。大物歌手と付き合えるわけねーだろ」

「誰だ…?俺が可愛いって思う子…」

「あー、じゃあ最大ヒント。
最近フラミンゴで話題になったひと」

「………っ、まさかっ、お前、…先輩と?」

「まぁな」

「……………!!」


洋右の顔はだらしなく、口が大きく開いた。いや、これは力が抜けてるだけか。


「裏切ったみたいで心が痛いよ」

「なっ、…お前俺がコクった時にはもう好きだったってことか?」

「違うよ。僕は別に彼女のことは好きじゃない」

「はあ!?好きじゃない相手と付き合えるってのか?」

「んー…なんつーか、僕も彼女のことは好きじゃないし、彼女も僕のことは好きじゃない」

「?????」

「ま、そういうことだ」


僕はそのまま、鞄を手に取り席をたった。


「ど、どこいくんだよ」

「へ?帰るだけだけど」

「……ふんっ、なんだよ!!俺は除け者にして早速彼女と放課後デートですか!あーそーですか!」

「いや別にそんなこと言ってないじゃん」

「いーよ!気ぃ遣わなくて。非リア充は一人で帰りますー」


頬を膨らませて、洋右は僕より先に走って出ていった。


本当にあの人と一緒に帰るとか、しないんだけど。
つーかありえねぇ。

頭を掻きながら、階段を下る。


「あら、横山くん。今帰り?」

「…先輩」


そこには、もう声でわかる。

税所亜樹だった。


「一緒に帰りましょうか」