「あなた、女子にモテるのよね?」
「…は?」
いきなりどうした?
ていうか、そんなの自分で言うことではないだろう。
「モテるのよね。モテると言いなさい」
「…はい。僕はモテます」
「宜しい」
ナニコレ…。
下手な謙遜も相手を傷つける場合もあるが、こんな強制的な答え方というのは自分の心が傷ついてしまう。
「あたしもモテるのよね?」
「…は?」
「モテるのよね。モテると言いなさい」
「…はい。税所先輩はおモテになります」
「ちょっと嘘っぽいけど、まぁいいわ」
彼女はため息をついて、小さく舌打ちをした。
「あの…なんですか?」
「うん?」
「なんで、そんなこと急に訊いてくるんですか?」
「それはね、あなた、さっきみたいな女子の親衛隊にイライラしてるでしょう。毎日」
親衛隊?
あれ親衛隊だったの?
「ええ、…まあ」
「あたしにもそういうのがあるの。
毎日毎日、ストーカーまがいのこともやられたことがあるわ。本当に気色悪い」
「………」
「それで」
「それで?」
「あなたに彼氏のふりをしてほしいと思ってるの」
「……………」
僕の耳が壊れたのかな?
「あたしの彼氏のふりをしてください」
うわ、幻聴が2回も聞こえた!
「ごめんなさい。僕、今日ここで降りますんうげっ」
椅子から立って、出入口の方へ向かったら学ランの襟を掴まれた。
「待ちなさい。私の話を聞きなさい」
「イヤイヤ、僕、ちょっとヤバイ幻聴が聞こえるようになってしまったので耳鼻科に行ってきます」
「何が幻聴だボケェ」
「お願いします。今日は見逃して下さい、親分」
「誰が親分だ」
おぉう、なかなかツッコミ上手いなこの人。
僕のボケを迷わず返すとは。