森山課長と伊藤さんの情事の現場に居合わせた時だってホントは吐きそうなくらいに驚いていた。
『だって初めて目にするアレが課長のモノってホント勘弁して欲しかったよ』
でも何故かそれが表情に出ない私は能面顔らしい。
それで助かる場合もあるけれど、誰の助けも必要としていない強い人認定されるのは誰にも頼れないから正直とても辛い。
『今、助けて欲しいです』とか『抱え過ぎて辛いです』も言えなくて、
結局は皆が楽しそうにコミュニケーションを交わす間も一人コツコツ仕事をする羽目になり、課内で浮いた存在になってしまっている訳。
「大園さんも今日一緒に飲みに行かない?」
私が歓送迎会や忘年会などの絶対に外せない時以外は課内の飲み会に出席しないとは知らない中村課長が一緒にどうかと声を掛けてくれる。
もし行ったとしても皆との微妙な溝が、そこに居合わせた全員の居心地を悪くさせると思ったら罪悪感しか感じられない。
「ありがとうございます……でも皆さんで楽しんで来て下さい」
ここは是非ともニコリと笑ってお断りしたいところだけど、いつも通り笑うことも出来ずに能面顔でお断りした。
終業時間を過ぎ頃、今日だけはと急いで帰り支度を始める同僚たち。
「お先に失礼します」飲み会の席へと向かう皆を「お疲れ様でした」と仕事を続けながら見送る。