私の足を気遣ってくれたんだ。
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
二人きりで話せた。この調子で質問してみようか?
「あの。蓮見さんは、この結婚に異論はないんですか?」
勇気を出して振り絞って出した私からの質問。
蓮見さんは笑顔を崩すことなく答えてくれる。
「はい」
「そうですか」
はい、って。
一瞬の迷いも見せずにそう答えられるんだな、この人は。
だけど。蓮見グループといえば今の日本を背負って立つ大手企業だ。
高校生の私でだってその名前は聞いたことがある。
確か昔は日本の大手財閥のうちのひとつで、戦争ですべてを失ったけれど、
少しずつ着実にいろいろな所に幅を広げていったんだよね。
..確かお父さんがそう言ってた。
建築から不動産、今は旅行会社とさまざまなところで
世界とわたり歩いている会社、
なんだとか。
難しいことはよくわからないけれど、
それくらいすごい会社の跡取りなんだもんね。
結婚相手だって簡単に見つけることはできないはず。