――俺が?
 人を殺す?
 そんなことしない。
 するわけない――――

 そう思っていたのはいつだっただろうか。


 ……昨日じゃないか。


 昨日そんな綺麗事を言った俺が


 今、全身鏡と向かい合っているなんて。


 人を殺したい、なんて思わない。

 ただ俺はあいつが憎いだけ。
 あいつさえ居なくなればいい。
 あいつが死ねばいいだけなんだ。


 全身鏡に写った自分は、虚ろな目をしていた。

 でもどこか、これからすることを楽しみにしている気がする。


 悪を滅するのは当然であり必然だろう。

 そう思えば何も怖くない。

 やり方派菜々未に教わった。
 使うものは目の前にある。
 殺る相手はちゃんと居る。



 だから殺る……。



 俺はもう、戻れない場所に来てしまったんだ。


 時刻は丑三つ時。

 俺は一人じゃんけんをする。