「わざわざ呼び出して、何なの?」
唯が迷惑そうに言う。
「すみません唯さん。お金を渡したくて」
やはりあの男も唯の金蔓か。
唯があんなマッチョを好むわけもないしな。
「いくら持ってきたの?」
「二万と三千円です」
…………
……俺の元所持金じゃねぇか!!
男は唯に――俺からとった金を手渡した。
「二万? 少なっ」
うるせぇよ……心の中で怒りが渦巻く。
今すぐ飛び出てお金をぶんどって行きたいところだが、それは危険過ぎる。
今は、彼女も居るし。
「このお金で、ぜひデートでも――」
「嫌」
二万三千円を使ったデートの誘いは、言い終わる前に拒否された。
「たかが二万で私とデートなんて、図々しい。次に会う男が居るからさっさと帰って」
うわあ……。
何だか男が哀れに思えてきた。
「……分かりました。今度はもっと金持ってきますから」
どんだけ唯とデートをしたいんだこの男は。