全く、どうしてあれだけ長々と説教が出来るのか。

 苛々を抑えきれず乱暴に階段を上がり、自分の部屋に入ろうと――

 ――ガタンッ!

「ん?」

 すると、何かが壁に思い切りぶつかったような音がして、俺は振り向く。

 音は、隣にある妹の部屋から聞こえた。

 ――ガタガタッ

 あ、まただ。
 何の音だ?

 怪訝に思い、妹の部屋のドアをノックした。

「菜々未ー?」

 返事を待たずにドアを開けると、我が妹――菜々未は自分より大きなものを抱えていた。

「――わっ! 勝手に入って来ないでよ!」

 菜々未が俺に気付いて怒りだす。

「ちゃんとノックしてから入ったし――っていうか、何してんの?」

 ――ガタンッ

 菜々未はそれを床に置いて、俺を見る。

「返事してないのに入ってこないでよ。これは――買ったの」

「はいはい。買ったって、何でまたそんなものを?」

 俺は狭いスペースに置かれたそれ、全身鏡をまじまじと眺めた。

「そりゃあ、お年頃なんだからオシャレとかするもんっ!」

 菜々未は頬を膨らませ言った。

 オシャレねー……そんなに大事なものなのかな。