どこかから声がして、俺は警戒し辺りを見回す。

「優斗、さん?」

 すぐそこの曲がり角から、女の子が出てきた。
 どこかで見たことがあるような――

「菜々未のお兄さんですよね?」

 ――あ、そうだ。


「のぞみ、ちゃん?」

 何度か家で見たことのある顔。
 菜々未がよく家に連れてきていたから。

「あっはい、覚えててくれたんですね」

 まあよく遊びに来ていたから、というのもあるが、昨日の菜々未の話に出てきたから、というのも正直ある。

 どちらかというと、友達の兄の名前を覚えている方がすごい気がするが、これも若さか。

 などと思っていると、

「どうしたんですか、その傷!?」

 俺の状態に気付いた彼女が、慌てて聞く。

 服や顔は汚れてるし、多分顔も痣がある、唇は切れて血が滲んでいて、腹を押さえて、息遣いも荒い俺。

 ああ、それはどうしたのと聞きたくもなるな。


「まぁちょっとね、のぞみちゃんこそこんな夜にどうしたの?」

 今はもう七時頃だと思う。
 こんな遅くに中学生がのこのこ一人で歩いてるなんて……あれ、今の時代はそんなに珍しくも無いのか?
 まぁ俺も普通に遊んでたか。