「親父、財布とったよ」

 財布を抜いたのは、学生の奴のようだ。

 マッチョ男は俺の顔を殴りながら言った。

「おう、どんくらい入っとる?」

 俺の唇が切れ、血が滲み出る。

「えっと……二万円と、ちょっと」

「は、金ねぇな! 貧乏の分際で唯さんの彼氏面してんなよ……」



 俺は目を見開いた。


「お前……唯って……」


 マッチョ男は、しまったという顔をして

「うるせぇな!」

 俺の脇腹を思い切り蹴飛ばした。

「かはっ」

「ちっ……行くぞ」


 マッチョ男がそう言って歩きだすと、他の二人もマッチョの後を追って歩きだした。


「くっ……はぁ、はぁ」

 立ち上がろうとするが、全身が――特に腹が――傷んでなかなか立ち上がれない。

 今まで比較的平和な人生を歩んできたので、喧嘩などもあまりしたことが無かった。

 今のダメージは、かなり強い。

 俺は壁を頼りに歩き始めた。
 たくさん蹴られた腹部が、歩く度に痛んで、力が入らない。




「……あれ?」