「ただいまー」

 夜八時、ようやく唯から解放された俺は家に着く。

 大量の荷物を持っていた所為で、腕や肩が痛い。
 我ながら情けないものだ。

「遅かったじゃないの!」

 リビングに続くドアを開けると、母親の罵声が聞こえてきた。

「いつもご飯の時間には帰ってきなさいって言ってるでしょ! もう炒め物冷めちゃったわよ!」

 うるせーな……俺だって好きであんな奴と遅くまで一緒に居ねーよ。

「っていうか、ご飯食べてきたし」

 高級料理店でな。
 勿論全部俺の奢り。

「ちょっと、何でいつもそうなの!? もう嫌になっちゃうわ。優斗はいっつも――」

「うぜー、まじ死ね……」


 嫌になっちゃうのはこっちだっつーの。
 俺は脅されてるんだぞ。
 ――とはいっても家族に、『俺はクラスの女の子にパンツを触っている写真を撮られて脅されてます』なんて口が裂けても言えない。


「――だし、大体ねえ、最近口の聞き方も」

 まだ説教が続いている。

 あーもう、うざい。

「はいはい分かりましたぁー」

 俺はそう言って、母親がそれ以上何か言う隙も与えずに、早々とリビングを後にした。