「早く映画館に行くわよ!」

 俺の腕を掴んでズカズカと歩きだす唯。

「……はいはい」

 それにしても、一時間半待ってでも見たいなんて、余程面白いんだな、きっと。


「あの映画ね!」


 唯が指差したのは、“if...”という恋愛物だった。

 女が見たそうなやつだな、と思いながらチケットを二人分買い、映画館に入った。







「やばい…………」


 俺達は映画を見終わって、近くのカフェで軽い間食をとっていた。

「優斗、泣き過ぎー!」

 唯が呆れたように笑いながら言う。


 そう、俺は完璧に胸をうたれてしまったのだ。
 見た映画に。

「だってさぁ……、ラストが! ラストがあぁ……」

 思い出すとまた目が潤む。

「男のくせにメソメソするなっ!」

 唯が俺にハンカチを差し出した。

 あ、このハンカチ昨日の買い物で買わされた物の一つだ……。

 そう思いながら涙を拭う。

「全く……こんな奴、初めてだしぃ」

「悪かったな泣き虫で……ズビッ」

「ちょ、それで鼻かまないでよバカ!」