次の瞬間、幹ちゃんは私を見下すようにして嘲った。




「だって紅子のほうが可愛いしさ」



 ――は?

「そんなことで――?」


「やっぱり彼女が美人だったら自慢じゃん? それに、体も触らしてくれるし。お前、悪かないけど地味だし――」


 意味分かんない……。
 私の彼氏は、こんな人だったの?

 私はこんな人に恋をしていたの?

 はっ、涙も流れない。

 最低…………!


「つー訳だから、丁度いい機会だし俺達別れよーぜ?」


 こいつ……、全然悪いとか思ってないし。
 ヘラヘラ笑って、ムカつく。
 いや、ムカつくなんてもんじゃない。
 どす黒い感情が、胸へ、そして口へ込み上げる。

「んじゃあね」

 軽く手を振って歩きだそうとする幹ちゃんを、私は声を出して止めた。




「待ちやがれ!!」


 今、女捨ててます。


「てめー、浮気したっつーのに詫びの一つもねーのか?」

 驚いて振り向いた幹ちゃんの胸ぐらを、ぐっと掴んで引き寄せる。

 幹ちゃんは私の豹変した態度にさらに驚いたのか、目を見開いている。

 幹ちゃんと一緒に去ろうとしていた紅子ちゃんも、同様にこちらをまじまじと見つめる。

 のぞみは、やれやれという風に首を振った。
 のぞみはこんな私を何度も見て来たから。