小椋大樹は私の隣にすとんと座り、話を切り出した。


「あいつ、ああじゃん?」

 あいつとは紅子ちゃんのことだろう。
 そして――

「ああ――って?」

「だからほら、人に物借りてそのままだったり、何というか……我儘なところもあるじゃん」

「よく分かってんじゃん。さっきは庇ってたくせに」

 私は皮肉を込めて言った。

「だってなんか、泣いてたから……つい熱くなって。すまん」

「べっつにー、いいけど」

 私はまだ心の隅で、小椋大樹は紅子ちゃんのことが好きなのではないかと疑っていた。


「あんなんだけど、友達で居てくれねーかな?」

「………………」

 正直迷った。
 こう頼まれちゃ、断るのも何か気まずいし。
 でも、あんな紅子ちゃんと今まで通り仲良くするのは……。

「――ちょっと考えさせて」

「おう」


「っていうか、イトコ思いなんだね」

「別に……」

 小椋大樹の顔が、少し赤く見えた気がして、無意識に心臓が激しく音を立てていた。