私がまだ驚いた表情をしていると、小椋大樹はプッと笑った。

「何笑ってんの?」

「……驚きすぎ」

「いーじゃんっ、用はそれだけ? じゃあね」

 返事も聞かずに私が歩きだすと、また私の腕が掴まれた。

「まぁ待てって」

「まだ何か?」



「ちょっとした頼みがある」





 キーンコーンカーンコーン……


「ああ授業が始まった……。私の存在が教室に無いままで」

 私は今、屋上に居る。
 柵に寄り掛かって座っている。

「サボりくらい、普通にするだろ」

 隣で立ったまま柵の向こうを見ている小椋大樹は、毅然とした面持ちで言った。


 そう、私達は授業をサボっております、はい。

「私は小椋大樹なんかと違って、真面目で勉強熱心な生徒だもん」

「うわー、嫌味ー?」

 小椋大樹がわざとらしく嫌がる声を出す。


「うん」

「うわっ、肯定しやがった」